十王院カケルの戦いについて

前回の記事をご覧いただき、ありがとうございました。

周囲にアレクの女もアレクの奴隷もおらず壁打ちツイートを繰り返していたので、色々な方に読んでいただくことが出来、じわじわと嬉しさがこみ上げました。


※本記事は、2017年7月時点で本編中では明確に定義・表現されていない「十王院カケルはストリート系である」という雑誌情報を前提とするものです。

※本記事は現在公開中の映画『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』のネタバレを含みます。
※文中の情報は主にネットから得ているため齟齬もあると思います、そして何もかもが自分の勝手な解釈に基づくものです予めご了承ください。


私は「オバレ箱推しカヅキ担」であると同時に、男っぽいカッコよさのある「FREEDOM」なショーを魅せてくれるストリート系も愛しています。

前回、アレクを語るためにカヅキさんとタイガくん、黒川冷さんというストリート系の面々について触れましたが、もう一人、語りたいストリート系スタァがいます。

今回の『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』の影の功労者・MVPともいえる、十王院カケルです。


KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』(以下、キンプラ)は「2クールでやる内容を70分にまとめた」ような情報量の多さであり、物語の主軸になっているのは「速水ヒロの挫折と成長と復活」でしょう。

それ以外の大きな要素として、「シンとルヰの物語」「ストリート系の戦い」「聖・仁・ジュネの愛憎劇」などがあると思います。

この「ストリート系の戦い」には、カヅキさんの武者修行と再起、アレクの破壊的なショーからのアレクVSタイガ、カヅキさんのスタジアム再建ショーといった内容が含まれます。

そしてもうひとつ、「十王院カケルによるプリズムシステムのオープンソース化および、プリズムキングカップにおけるプリズムシステム・プリズムウォッチ導入」もまた、「ストリート系の戦い」を構成する一部であると私は捉えています。


プリズムキングカップのステージに立ったストリート系の三人は、それぞれ、独自の美学や信念を貫いた戦いを魅せてくれました。

「プリズムショーの破壊者」「暴君」の名に恥じないどころか、その美しきシックスパックから爆弾を落とし、物理的に会場を破壊するという文字通りの破壊者となった大和アレクサンダー。

ストリートのカリスマ・仁科カヅキから「エーデルローズのストリート系」を託された香賀美タイガは、アレクの破壊行為と挑発へ果敢に飛び込みバトルを仕掛け、古き良きヤンキー感溢れる木刀、祭好きである彼らしい修羅場うちわを駆使する、単純なカッコよさだけではない、彼ならではのアッパー感のあるパフォーマンスでアレクに対抗し、勝負をドローにまで持ち込みました。

そして瓦礫と化したステージに立った仁科カヅキは、彼のマイソングである『FREEDOM』の歌詞、「ガラクタでステージをshow up組み上げろ」を物理的に再現してしまいました。王として人民を統治するのではなく、人民を解放し自由へと導き、名実ともに勝者ではなく勇者となった仁科カヅキの姿は、「ストリートのカリスマ」の称号に相応しいものでした。

十王院カケルは、同じステージで、プリズムショーはしませんでした。

しかし、彼はこのプリズムキングカップの中で、他のストリート系の三人と同じく、自分だけの武器、自分だけのやり方で「独自の美学や信念を貫いた戦い」をしていました。

ステージの外の戦い

プリティーリズム・レインボーライブ』(以下、プリリズRL)では、女の子たちそれぞれの、家族との関係や問題、そこからの自立や成長がテーマのひとつでした。

キンプラにおいても、十王院財閥の跡取りであるカケル、歌舞伎役者である太刀花ユキノジョウ、それぞれの父子関係が描かれています。

稽古に身が入っていないと父に叱責され、プリズムショーを辞めるよう窘められるユキ様からは、「迷い」や「苦悩」が感じられました。
(エイプリルフールの女装衣装からの指摘もあるとおり、プリリズRLにおける蓮城寺べる様と「親からの期待という呪縛」というキーワードの類似性を感じます)
キンプラではユキ様の「迷い」は解消されていなかったため、続編では、迷いを振り切り、自らの求めるところを見据え、更に上へと進むユキ様の姿が描かれるのでは、と内心期待しています)


そんなユキ様と父との関係性に比べると、カケルと父(十王院百次郎)との関係は、百次郎の人柄もあってか、どこか穏やかな雰囲気が漂います。

カケルへの接し方や会議での様子を見ていると、百次郎は部下にやたら威張り散らし強引に事を進める「傲慢なワンマン経営者」という雰囲気がなく、相手へ穏やかに接し、他者の意見もまず聴くタイプではと想像出来ます。
少々、頼りない風情もありますが、往々にしてその方が部下も「俺たちが支えなければ」と頑張るものなので、私は経営者としてはすごく魅力的な人格の方だな、と感じています。


ただ、プリズムシステムを通じてビックデータ産業へ乗り込んでいこうという野心を抱くカケルに対して、百次郎は「国を支えるのは鉄とコンクリート」だと言います。

この発言を初めて聞いたときには「えっ、こんな大財閥のトップが、そんな古めかしい発言を!?」と驚いたのですが、後に監督の舞台挨拶で、「キンプリの世界線では、バブルが崩壊していない。だから建物も豪勢で凝っている」といったニュアンスの話があったと聞いて納得しました。
おそらく、キンプラの世界線においては、百次郎のその発想も「現時点の状況」からそこまでズレてはいないのかもしれません。

ですが、カケルは一歩先、数歩先の世界を見据えています。だからこそのプリズムシステムなのです。


そんな百次郎に対し、カケルは自分の意見を取り下げず、かといって反発することも、長々と口先で説明することもなく、その場を後にしました。

そして伍友グループの勅使河原さんへ業務提携を持ち掛け、プリズムシステムのオープンソース化に関する契約を締結し、系列企業が開発した採点用デバイスをプリズムキングカップへ導入させ、伍友からの助力も得て見事に、プリズムキングカップを成功へと導きました。

エンドロールでは、業務提携の記者会見の檀上で握手をする百次郎と伍友グループのトップ、その会場内でこちらも固い握手を交わすカケルと勅使河原さんが描かれています。

今回のにはエンドロールには沢山のネタが仕込まれていますが、私はこの光景に、いちばん感動してしまいます。


言葉による説得でも、反発でも、対立でもなく、カケルは「実績」によって百次郎にプロジェクトの有用性を証明し、「鉄とコンクリート」という思想だった百次郎を、あの檀上へ立たせるだけの納得感を与えたんですよね。

プリズムシステムを展開させることはカケルの個人的な夢でもあるでしょう。しかしそれは私利私欲だけではなくて、十王院グループの未来のためでもあります。

「鉄とコンクリート」というトップの意見をうのみにして、その通りにだけ仕事をしていたら、十王院財閥は衰退してゆくことでしょう。過去と同じことを反復するだけでは、企業は発展も成長もしません。停滞は衰退への第一歩でしょう。


経営者には、「鳥の目」「虫の目」「魚の目」という三つの視点が必要だと言われています。

「鳥の目」は物事を俯瞰して見ること、「虫の目」は物事を近くから様々な角度で見ること、「魚の目」は時代や変化の流れを見ること。

……十王院カケル、確実に、これ全部身についてますよね、どう考えても。


百次郎が見ることが出来ていない「時代の流れ・変化」や「未来の産業」を見ているからこそ、カケルはプリズムシステムのオープンソース化に取り組んだのでしょう。

そしてそれは、十王院財閥が、これまでの「鉄とコンクリート」だけを重要視するのではなく新たな時代の流れにも対応できるよう、変革を進めてゆくための礎になることでしょう。

それだけではなく、「審査員の主観」や「観客の表層的な感情」に左右されない、より公平にプリズムショーが評価される世界への第一歩でもありますし、感情を数値化する技術は、プリズムショー以外にも様々な産業に活用されることでしょう。

カケルが投じた一石は、まだまだこれから、広がりを見せるものになるはずなのです。


このカケルの素晴らしい仕事ぶりを見て、カケルは本当に、自分がやりたいことや「目的」が明確で、それを達成するための「手段」をキッチリ逆算して「実行」することが出来るビジネスマンなんだなあ……と感心しきりでした。

そのため、カケルがプリズムショーをやる理由や目的、動機、そしてプリズムスタァとして目指すゴールも、カケルの中ではかなり明確なのでは?と感じています。

十王院財閥の後を継ぐことに関しても、単純に「決められた道」「親の期待に応える」というだけではない、カケルなりの目的やモチベーションがあるのだと思います。

……そんなカケルが高校1年生なんですよ。16歳ですよ。16歳で、自らの役割も、自分の持つ力も才能も、何もかも理解して、更に精度を上げて「ビジネス」というフィールドで戦っているんですよカケルは。

どんな天才でも、何もせずそんなふうにはなれないでしょう。学習と実践の積み重ね、目的達成のためにPDCAを回してきたことが、今のカケルのあの商才と立ち回りのもとになっているのでしょう。


タイガくんが、アレクの暴走を止めようとバトルを挑んだように。

カヅキさんが、破壊されたステージを再建したように。

カケルは、カケルにしか出来ない戦い方で、日々研究開発を重ね戦略を練り準備を進めリスクを分析し対策を立てトラブルに対応し、仲間を、ヒロ様の勝利を、後押ししたんですよね。


そのカケルの在り方に私はすごくすごくすごく!ストリートの魂を感じるんです。

ストリート系は、誰かの真似事じゃなくて、何かのルールに縛られるんじゃなくて、「FREEDOM」に、己の美学と信念を貫くもの。
カケルの戦いはまさに、その通りだったと感じます。
あんなことが実現できちゃうの、カケルの他にはいませんから。

たとえステージに上がらなくても、カケルの戦いぶりからは、ストリート系の熱い魂を感じることが出来ました。


カケルとヒロ様、周囲との関係性

他人から見れば「持たざる者」としか言いようがない境遇に生まれながら、仲間に助けられ、誇りを持ってひとつひとつを己の力で積み上げ勝ち獲って、キングへとのぼりつめたヒロ様。

「持つ者」であることを最大限に活かし、己の力と可能性を更に広げていくカケル。

その対比、そしてカケルの憧れのプリズムスタァがヒロ様であることなどなどを考えると、胸にグワッと熱いものがこみ上げます。


表層的な感情ではない、真の感情を数値化できるプリズムシステムを大会に導入させたこと。

真田常務によるプリズムシステムの緊急停止(破壊?)から、驚くほどの速さでシステムを復旧させたこと。

人の心を詳細に数値化するプリズムシステムの開発により、大会の採点方式としてはヒロ様とルヰくんが同点(満点)でも、実測値では大きな差があることを証明し、客観的にも公平性・納得感のある優勝へとヒロ様を導いたこと。

シュワルツローズが観客や審査員を買収することまでカケルが予測していたかはわかりませんが、これらすべてが実現出来ていなければ、ヒロ様がキングの座に就くことは難しかったかもしれません。(あとは伍友に協力してもらった、借金の件もですね)

憧れのプリズムスタァが玉座につくための、大きな手助けをしたこともまた、カケルの中に大きな達成感を生んだのではないかと思います。


とはいえ本編中、カケルがヒロ様との距離を縮めようとする描写はなく、そもそもヒロ様に憧れていること自体、カケルは秘密にしているようです。

ヒロ様の勝利にカケルが深く寄与していることを、本編中でヒロ様が知っていそうな描写もなく、また、ヒロ様にそのことを知ってほしい・感謝されたいとは、カケルは望まないだろうな、と私は感じます。

でもカケルにとってヒロ様は唯一無二の憧れの存在であり、ヒロ様はカケルに助けられています。

このヒロ様とカケルの絶妙な関係性が、私は本当に本当にたまらなく好きです。


ストリートの元祖・黒川冷、そしてストリートのカリスマ・仁科カヅキ。

ストリートの系譜であるタイガとアレクは(形や表現は違えど)そのふたりへの憧れや執着を抱いていますが、カケルは少々、立ち位置が異なる印象を受けます。

とはいえ、黒川さんやカヅキさんへの憧れや尊敬が一切ない・興味もない、ということはないでしょう。そもそもカケルはプリズムショーオタク的なところもあると言われており、キンプリでの高架下での戦いにおける反応を見ていると、「仁科カヅキ」がある程度、彼にとって特別な存在であることは確かです。
ただ、距離感がある。

カヅキさんは面倒見の良さがハンパないひとなので、もしカケルが慕う素振りを見せれば、もちろん受けとめてくれることでしょう。

でも、カケルには頼れる「先輩」も「アニキ的存在」も、必要ないのかな、と感じます。

だからヒロ様に対しても、カヅキさんに対しても、一貫して距離感があるのかなと。

とはいえ同じエーデルローズ生のことは、仲間として信頼しており、居心地のよさもあるのかなと推察できます。
ヤンキーな年下のタイガくんを「タイガきゅん」と呼んで揶揄ったり、シンくんのことも「シンちゅわん」と呼び積極的に絡んだりすることで、皆と馴染みやすくしてくれている、お兄さんぽい側面もあるように見えます。
性質的に(また、置かれている立場的に)、上に甘える・頼るより、下を甘やかす・構う方が得意なのかもしれません。


また、そんなカケルについて考えていると、カケルと同い年の鷹梁ミナトさんが「カズオ」という本名呼びを続けているのも気になるところです。

「カケル」という名前がカケルの「こう見られたいと作り上げたキャラ」の象徴であるとしたら、「カズオ(一男)」は「本来の生身の自分」や「逃れられない宿命」の象徴のようなもので。

本人の意志をあえて尊重せず、その「カズオ」という名でミナトさんが呼びかけ続けるのは、イタズラ心だけでなく、何らかの意味が込められているように想像しています。(ミナトさんは他のメンバーは苗字で呼ぶのに、カケルだけ名前で呼ぶところも気になるところ)


そして父との関係性、会社における立場、将来の進路などにはあまり問題のなさそうなカケルの成長するポイントは、そのあたりにありそうだなぁ~と、漠然と考えています。

「プリズムジャンプは心の飛躍」ならば、「カケル」というキャラを多少なりと作っている状態から、もう一歩踏み出さなければ、より強いプリズムの煌めきを放つことが出来ないのかな、と。

そして十王院カケルがこの先プリズムショーの道で迷ったとき、北極星となるのが、速水ヒロという存在だとうれしいな~と勝手に考えています。



キンプラの中で、私が一番好きなカケルの台詞は「ウチの営業優秀ぅ~♡」です。

思惑通りに事が進んだことをただ喜ぶのではなく、真っ先に、部下を惜しみなく褒める言葉が出てくる上司がすごく好きで。しかも部下がいない場であれなら、きっと本人には相手に合わせてもっと良い表現をするんだろうな、カケルは良い経営者になりそうだな、と思いますし、あと単純にカケルが心底うれしそうにするから、こっちもすごいうれしくなっちゃうんですよね、あの場面を見てると。

だから応援上映では、いつも「良かったね!」とそのセリフに合いの手を入れてます。カケルと喜びを分かち合いたくてたまらなくなっちゃうので。

総資産200兆円の十王院財閥の跡取り、16歳ながら頭もキレるし仕事も出来る、なんて、ともすれば小生意気で憎たらしく見えそうなんですが、それを中和…するどころか魅力的にみせているのは、チャラい言動だけでなく、そこに透けて見える熱さや真摯さ、ふとこぼれる感情表現のピュアさなのかな、とも思います。

タイガの活躍を見て思わずシンくんにキスする場面など、演技でも演出でも計算でもないカケルの行動は、驚くほど無邪気で愛らしく映ります。

その「16歳とは思えぬ抜け目ない優秀さ」と「16歳には珍しい無邪気さ」というアンバランスな要素を内包しているからこそ、私はカケルを魅力的に感じるのかもしれません。そのアンバランスさもまた、少年期特有の、今この瞬間だけのものかもしれません。



きっと、カケルのプリズムショーは、私がこれまで観たショーから「ストリート系は大体こんな感じ」と考えているイメージをぶち壊すような、クーさんともカヅキさんともタイガくんともアレクとも違う、「カケルにしか出来ない」プリズムショーなんだろう、と想像しています。

カケルをはじめ、まだショーを披露していないエーデルローズ生のプリズムショーを観ることが出来る日を楽しみに、通常上映と応援上映と、来月から始まる4DXを観てゆきたいと思います。