ESCORTはいいぞ

それはまるで、一見地味めで大人しいけど実は端正な顔立ちで笑顔が可愛い図書委員のあの子が、休日の夜、適度に色っぽくオシャレに華やかな装いで、ハイヒールを鳴らして歩くのを見かけたときのような。

僕が加藤シゲアキというアイドルを推すと決めたのは、美恋コンDVDのアンコール、「メンバーみんなと抱き合いたい!」と無邪気に言う彼を見たときだった。

有名大卒で小説家の肩書きを持ち、ちょっとサブカルっぽい趣味で、どちらかといえばクールに振る舞う人なんだろうと思っていた彼の、あまりにも無垢で、無防備な笑顔に、僕はまるで、恋に落ちるときのように魅了されてしまった。

今になって思えば僕は、彼の強い自意識ゆえの無自覚さ、己を責めがちで危うげな無防備さ、アイドルとして生きるには繊細でやわらかすぎる心、みたいなものを勝手に読み取って脳内で構築して勝手に惹かれていたのだと思う。

軍服めいた白い衣装に身を包み、レースの手袋で葉巻を吸い、マイクを掴み、あやしげな女性ダンサーを従えて妖艶に歌い踊る彼の姿を、そしてその物語を、僕は呆けたように眺めていた。

これが、彼が、彼のために描いた物語だというのか?

……ああ、でも、そうだ。

彼は伏線を張り巡らせ、読者を巻き込み、物語を楽しませる書き手だった。ただのお人形さんでも、依り代でもない。加藤シゲアキは、脚本家であり演出家であり、そして、役者だ。

きっと彼は、己の無自覚で無防備な面、自分には知覚できないがファンからは愛されている部分があることも、知っていて、そのうえでアイドルとしてパフォーマンスをしている。

どこからが彼のシナリオどおりで、どこまでが現実で、なにが真実かは、誰もわからない。すべては虚構、かもしれない。

僕が知っていると、解っていると、思っていたのは、あまりにも浅はかすぎた。

水際で足を浸すように楽しんでいたつもりが、いつの間にか、深淵を覗き込んでいたような、そんな気分になりながら繰り返し、僕はその映像を再生し続けた。

という私の中のドルオタ(37歳独身男性・会社員*1)の手記から始まりましたこんばんは。ちょっと私も私の中のドルオタおじさんも混乱してる。未だに混乱してる。あまりにも凄まじいものを見せられて、私たちの知らない加藤さんを見せられて、困惑している。

何に困惑してるって、加藤シゲアキさんのソロ曲『ESCORT』のMV*2に、です。


この曲、昨年のコンサートでは、ベルボーイ衣装の加藤さんが、舞台上に散りばめられたホテルを連想させる様々なセットをJr.達と闊歩し、時にコミカルに、時にキュートに、ミュージカル的にパフォーマンスをしていた。

ラストは、ドアの奥から伸びる手に青いバラを渡し、「シーッ」と人差し指を唇にあて自分もドアの向こうに消える…という、猥雑ではない小洒落たセクシーさと、圧倒的キュートさを兼ね備えた舞台。

あれもあれでめっちゃよかった。よかったんです。当時はそのキュートさにめっっっっちゃ悶絶したんです。あれも大好きな演出です。


でも、MV、あれは、何なんですか。


私の混乱をお分かりいただくために、初見時のログをそのまま載せます。

コンサートの主人公は「エスコート」する側で、MVも主人公はウェイター設定で、のっけから美女の後ろ姿も出てきたから、そういう路線なのかなと思いきや……あの展開ですよ。

自分で自分のそういうとこ引き出して魅せられちゃうんだぅええええええええええーーーーーーー!!!!????????? って驚愕した。ホント、心底驚愕した。


このMV観るまで、私は後者の小悪魔性には気づけてなかったんですよね。いや『チュムチュム』で自分のことフェルメール絵画の美少女に似てるとか言い出してた時点で気づけよって話なんですけど。

何かねー、すごいピュアで自分の魅力に無自覚なんだろうなと思ってた女の子が、実はキッチリ計算も出来る冷静なしたたかさを持ってた!と気づいた童貞みたいなテンションになってたねこの時。それがマイナス方面にショックなわけじゃないの。冒頭にも書いたとおり、別の魅力、別の一面、その奥行きにドキッとしちゃってるの。


同じグループ内で言えば、手越さんや増田さんが自己プロデュースの鬼っつーか鬼神レベルで、特に増田さんはあまりにプライベートが見えなくてファンから「不信感を抱いている」と言われちゃうほどに「アイドル・増田貴久」としてパフォーマンスしてて。

そういう他メンバーと比較すると、加藤さんは割と、人間っぽい生々しい一面を見せてくる人だな、不器用そうだな、なんて勝手に思ってたわけですよ、アホな私は。

それがあんな完璧なセルフプロデュース作品見せられたら、感服。感服しかない。


もうさー、何なの? 加藤シゲアキ何なの? 変ラボでは色んな母乳飲まされてるのに何なの? どれだけ私と私の中のドルオタおじさんの心を弄ぶの?????

正直ちょっと、今もどういうテンションで向き合えばいいのかよくわからないままこれを書いてる……


はたして「誰」が「誰」を「エスコート」したのか…? って、考えるだけでうっとりするよね。


予備知識あまり入れずに楽しんでほしくて、あんまりネタバレしたくないんですけど、この圧倒的ビジュアルの良さだけは伝えたかった。


いやもう、設定もストーリーも舞台も衣装も照明も演出もこの作品を作るすべてが寸分の狂いなく私の好みです。ラストの一瞬まで! バチーン好みです。勘弁してほしい。


あとちょっとマトモなこと(当社比)言うと、現実とは思えない不条理で鮮烈でグロテスクで美しいイメージの連続と、自分と他者と自分が知らない自分と自分が知らない他者と自己受容と、なんだか色んなイメージがあいまって、『ピンクとグレー』が想起される映像作品だったよ。

もっと、加藤さんの撮る作品が観たいと思った。


これほどに考察のし甲斐があるアイドルなかなかいないよな!!!! とあらためて思ってて、加藤担さんの集まりに傍聴人として参加したい。皆さんの加藤さんへの愛と考察を拝聴したい。そんな気持ちでいっぱいです、今。


そういう私の個人的な趣味嗜好性癖を差っ引いても、単純に男性アイドルが己の魅力を最大限フルスロットルに活かして作り上げたソロMVの希代の名作として、上田竜也の『MONSTER NIGHT』と一緒に、加藤シゲアキの『ESCORT』を今後、全力で推してゆきたい所存です。観ないオタクは損してるから。マジでマジで。

ESCORTはいいぞ。

*1:女子ドルオタである私が男性アイドルを女子ドル目線で見てしまう時に現れる人格。主に加藤さんに対して発動する。例)

*2:NEWS LIVE TOUR 2015 WHITE(初回盤) [DVD]および、NEWS LIVE TOUR 2015 WHITE(初回盤) [Blu-ray]の特典DISCに収録