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「波長の合う落語家」と出逢ってしまった私の話

雑感

#おたく楽しい Advent Calendar 2015 - Adventar

大大大遅刻申し訳ございません! 一年越しの #おたく楽しい。しきさん(@shikishaa)主催企画への参加記事です!

「落語を楽しむコツ」とは?

私が「落語が好き」と言うとありがたいことに「興味がある」「教えてほしい」と言っていただく機会も多いのだが、私自身が超絶にわかで知識がない&好きなものをロジカルに組み立ててオススメするのが苦手だから難しい…というか、何かを説明したり教えたりするものではないよな落語とは??? とずっと悩んでいた。

が、今年2016年4月20日、『伊集院光とらじおと』に三遊亭圓楽師匠がゲスト出演された回における、落語に関する話が「な、なるほどー!」と目から鱗&「それで良かったんだ…!」と安堵。


私が下手に入門ガイドとかオススメとか書くより(そもそも書けない)、落語に興味がある方はとりあえずこのことだけ知っていただければ…! という内容なので、以下に書き起こしさせていただきます。

(ちなみにこの回、圓楽師匠のお話が全編マジで素晴らしすぎて、処世術や教育など人生における様々なことに役立つ回なので、いずれ全編書き起こしたい!)


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圓楽:(古い言葉が)わかんなくたっていいんだよ。だってわかるもん、(落語は)長文読解だから。いちいちそれ説明しなくても、長文読解だから何とか筋がわかる。

伊集院:それね、メールであったんですよ。えっとね、「落語の聴き方をどうすればいいのか、教えてください」

圓楽落語は、そこへ行って、自分と波長の合う落語家を探して、その落語家がどんな噺をやるか、いろんなところで噺を変えてやってくれるから、いろんなネタがあるから、追っかけること。あと、波長の合わない落語家を聴くと苦しくなるから、うん。

伊集院:あれ、何ででしょうね? 落語って、「勉強」って意識でみんな来られるから、波長が合わないのに我慢して苦しい思いしちゃう人いるじゃないですか

圓楽:うん。あの、ましてね、落語って、勉強が歌舞伎と違って要らないから。歌舞伎は俺たちだってイヤホンガイド必要だから。あるいは、筋書き自分で調べていかないとダメだから。そこいくと落語は大丈夫。そこでは自分の波長に合う人を探す、自分の好きな料理をピックアップする。やっぱり、色んな料理が出てくるから、好きな料理と出会うこと。で、その料理を食べ続ける。同じ蕎麦でも変わり蕎麦がある、「俺は更科がいい」「俺は藪がいい」とか、そういう食べ方でいいのよ

伊集院:これあの(RN)サンチョさん。「CDで落語を聞いています。内容を必死に理解しようとしてますが、正直、私の理解不足もあり難しいと思ってしまいます。ぜひ落語を楽しむ心得を教えて下さい」っていうんですけど、ま、聴いてみることですよね

圓楽:そうそう、数聴くこと。慣れるから。耳慣れること。そして、違和感のない、自分と合う人を探すこと。これが一番。


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もし貴方が「落語に興味あるなー」と思ったら、ぐぐるでも本を買って勉強するでもなく圓楽師匠の言う通り、まず、寄席に行ってみてくれ! あるいは図書館で借りたCDを聴くんでも、TVを観るのでもいい! とにかく聴いて波長の合う人が見つかれば、絶対に面白くなるし面白いと思えるようになるんだと思う。

何せ私自身が落語を好きになったキッカケは、偶然、圓楽師匠いうところの「波長の合う落語家」に出逢ってしまったからなのだ。


突然の出逢い

それまで私は別段、落語に興味がなかった。

時々、母がTVで落語を観ていることはあったが、「よくわからないしつまらない」という苦手意識しかなかった。

いちばん大きな落語との接点は、思春期の私がヘビーリスナーだったラジオ番組『深夜の馬鹿力』だろう。元落語家の伊集院光の口から師匠のこと・弟子時代の話を聴くことはあったし、『落語リハビリ』という古典落語を元にしたお題に落語をモチーフにしてたりしていなかったりする荒唐無稽なネタが投稿されるというコーナーは楽しく聴いていたが、それで落語に興味を持つことも、苦手意識がなくなることもなかった。

週に一度はライブハウスに足を運ぶお笑いオタをやっていた時期もあったが、いわゆる「今のお笑い」にしか興味がなく、落語に触れることも触れようと思うこともなかった。


だから落語にハマったのは、本当に突然だった。


一組の芸人さんが一時間たっぷりネタやトークを披露する『笑・神・降・臨』というNHKのお笑い番組がある。

お笑いから二次元オタに回帰していた5年前、現場には行かなくなったものの変わらずお笑いが好きな私はこの番組を毎週予約録画し、気になる芸人さんの回だけをつまみ食いで観ていた。

その日、帰宅して夕飯を食べがてら録画分を確認した私は「ふーん、落語か。あんま興味ないけどまあ観てみるか」と軽い気持ちで再生した。

そこで私は、出逢ってしまった。

「落語よくわかんない」という幼少時の刷り込みで苦手意識あったんだけど、笑神降臨の古今亭菊之丞さんの噺がすごく楽しくてこれは寄席にも行ってみたほうがいいな!と
2011年9月16日 19:34 当時のツイート


そう、古今亭菊之丞、その人にである。(本も出してる)

こういう了見

こういう了見


このとき菊之丞師匠が披露したのは、『法事の茶』と『町内の若い衆』の二席。

談志や志ん朝など、私でも知っている落語家さんのモノマネを織り交ぜた軽妙な『法事の茶』にクスクス笑っていた私が、度肝を抜かれたのは二席目、『町内の若い衆』だった。


江戸情緒を感じる口調の師匠が演じる「長屋のおかみさん」が、それはもう、とてつもなく色っぽいのだ…!

それはたとえば壇蜜さんみたいな、直情的なエロスではない。生活感にあふれ、サバサバしていて、旦那の後輩にも愛嬌たっぷりでやさしいおかみさん。でも笑顔や所作、ふとした瞬間にドキリとさせられる…という人妻の色香。
(※注:私はロリコンの気が一切なく年上のお姉さんや人妻や熟女に色気を感じがちなタイプの童貞を心に飼っています)

その色気を男性が表現している!? ということ自体に戸惑いを感じたうえ、このネタのオチが艶っぽくて、知らないで聴くと「えええええええそういうこと!?」という驚きもあって、単純に「お笑い」としてサイコーに面白かったのだ。

おはようございますなんかすげえ晴れてる!昨夜は結局、笑神降臨10回くらい見たよ… 菊之丞師匠かっこいい…
2011年9月17日 8:42 当時のツイート

翌朝のツイート。のっけからハイケイデンスだな! 今もだが!


そしてこの番組を観た6日後、私は上野の「鈴本演芸場」という寄席に足をはこんだ。

寄席たのしかった…4時間ずっと座ってても苦にならなかったよ。そして生で見る菊之丞師匠すごかった… 客が爆笑しすぎてサゲ聞き取れなかったし。難しい技術とかわかんないけど、声の響きとか抑揚がすげー好きだわ
2011年9月23日 16:40 当時のツイート

生の落語の楽しさを知ってしまった私は、そこから菊之丞師匠が出演される寄席やホール公演などに足を運ぶようになり、CDやDVDを買い始めた。蕎麦屋での落語会で直接お話する機会もあった。

TVで他の落語家さんを観たり、菊之丞師匠が出ない寄席に行くこともある。(少なくとも笑点メンバーは全員、生でこの目で観ておきたい…木久扇師匠とたい平師匠はクリアしてる……)

ガッツリ追ってる、という姿勢ではないものの、お笑いと同じように今もゆるゆると楽しんでおり、たぶんこの先もずっと落語は趣味のひとつだと思う。


古今亭菊之丞師匠について

とりあえずこの動画を観てくれ。

「歌舞伎役者みてぇなツラしてるから」と言われ「菊之丞」の名をもらっただけある風貌、江戸の若旦那のような風情。

声自体にも艶があり、古いことばが違和感なく響く喋り方で、その純和風の雰囲気が聴いていてとても心地好い。

マクラ(導入部分)ではサラリと毒っぽいこと言ったり、やたら酒の話したり酔っ払いの演技が絶妙なところも好き。

何より、私の趣味嗜好をご存じの方には「オマエは落語でもそれなのか」と思われそうですが、私は菊之丞師匠の演じる女性がホンッッッッットに大好きで。座ったままの視線や所作、声や抑揚だけで様々な女性を演じ分け、しかもそれぞれ異なる色気がある、ってのが本当に素晴らしい…。

寄席など他の落語家さんを聴いて「面白いな」と思うことも、「すごい話芸だ…!」と驚嘆することもあるのですが、私にとって「波長が合う」という言葉がしっくりくるのは、菊之丞師匠だけですね。

師匠の芝浜が好き。落語もあいちゅーんずで買える時代! どこぞの事務所とは違って!


既知と引き算のエンタメ

私はジャニーズのコンサートが、それもKAT-TUNのコンサートが大好きだ。

壮大なセット、炎や水、レーザー、照明、映像、スモーク、バックのJr.、動くステージ。あらゆる要素がふんだんに使われる、足し算と掛け算のエンターテインメント。

落語は、それと真逆。

舞台には座布団ひとつ、そこに座った演者は、自らの話芸と扇子と手ぬぐいだけで客の脳内にあらゆる世界を創り上げる。引き算のエンターテインメント。


ものすごく真逆で、対照的な世界ではあるけれど、だからこそどちらにも強く惹かれるのかもしれない。

落語は「長文読解」や「想像力」が必要なエンタメなので、ラジオや小説など、「余白」のあるエンターテインメントが好きなひとには、馴染みやすい世界観だと思う。私は映像が苦手でラジオ(音声)と小説が好きなオタクなので、相性がよかった。


それともうひとつ、私が落語を好きな理由…というか、落語のひとつの要素として、「既知」という点がある。

いわゆる現代のお笑いでは、当然のことながら、その芸人さんのネタは、その芸人さんだけのものだ(ザキヤマさんのようなパクリ芸という例外もあるが)。

だが落語は違う。新作落語などその人だけが演るものもあるが、古典落語は同じネタを、いろんな落語家さんが演る。聴けば聴くほど、知っている噺は多くなる。


お笑いオタ時代、漫才では流れ星のネタが一番好きだった。「肘神様」をご存じの方にはお分かりいただけると思うが、初見では「いや何だそれ!?」と驚愕する予測できない展開、未知の要素があるところが好きだった(ちなみに同様の理由で、コントではエレキコミックのネタが一番好き)。

今も私はアイドルのコンサートにおいても「ネタバレを見ない派」だ。「未知」や「予測不能」が最も脳内麻薬を分泌させる、私の性癖なのだと思って生きてきたし、基本的にはそういう人間なのだと思う。


なのに、落語は、落語だけは違う。噺は知ってる、短いものならそらで言えるような噺すらある。展開もオチも全部わかる。なのに毎回、同じところで笑ってしまう。前回はするっと聴いてしまった、違うところで笑うこともある。

そして、思い返してみれば、それは『深夜の馬鹿力』も同じだった。今週分の放送を録音したMDを、行き帰りの電車で繰り返し繰り返し聴いていた。好きな回は何度も聴いていた。あれは「既知」のエンタメだったし、私にとって伊集院光は「波長の合う」ラジオパーソナリティーであり、「既知」のエンタメを楽しむ土台や「一人語りの話芸を楽しむ」土台は、そこでつくられたのだろう。

あと落語を通じて、「同じネタを違う人が演る」のは単純に面白い物なんだなー! という発見があった。オリジナルのネタでなくとも、制約のある中でも、オリジナリティは発揮できる。筋書きは同じでも印象が全く違ったり、細部の妙技に唸ったり、という体験を重ね、自分のなかの「楽しみ方の幅」が広がったように感じた。


で、落語ってどこで観れんの?

「一度は生で落語聴いてみたいな!」と思っている方に、選択肢はおおむね二つです。

  1. 寄席
  2. ホールなどで催される公演

お近くの市民ホールでもやるでしょうし、たぶん2のホール公演がハードル低いとは思うんです! が! せっかくなら寄席に行ってみてほしい~。

寄席の雰囲気自体も他にはないもので良いし、初々しい前座さんから圧巻のトリまでの流れも楽しいし、漫才や曲芸や手品など、落語以外の演目も面白い。


どの寄席も年末年始はめちゃくちゃに混むし前売り券もすぐ完売しちゃうのですが、通常の興行は当日券のみ。365日やってるので、行きたいと思ったらその日すぐに行けちゃいます!

早くから並ばなきゃ入れない、って程でもなく(少なくとも私は入れなかったことはないっす)近くに来てみたからちょっとふらりと、なんてのもアリだと思う。


鈴本演芸場
私が初めて行って、今もよく行く上野の演芸場。内装も新しめなので、初心者でも気軽に行きやすいと思う。

浅草観光なら寄席(落語)に行こう - 浅草演芸ホール
ロケーションを楽しむなら浅草もオススメです! ここは昼夜入替制ではなく、2,800円のチケットを買えば、なんと11:40~21:00ずっと観ていられる(!!)。

池袋演芸場
池袋駅を出てすぐ。上ふたつよりこじんまりとしており、最前席など演者の熱気が伝わってきてグッときます。

新宿末廣亭
実は未だに行ったことはないのですが、新宿にも寄席があります。来年は行ってみたいなあ。


あと年末年始は、NHKの『東西寄席』などお笑いと一緒にTVで落語が放送される機会も多いです。

2017年1月2日に一挙放送があるこちらもオススメ! 落語を映像化しているので、だらだらっと観れちゃうと思います。(我らが菊之丞師匠も出演されますヤッター!)


ダラダラと自分語りしましたが、知識も勉強も小難しいことは本当になくてもよくて、古典芸能…と身構えず、お笑いと同じようにただ気楽に落語を楽しもうぜー楽しまなくてもいいぜーそれは人それぞれ自由だし好みの問題だぜーというのが一番言いたかったことです。


ぜひ皆さまにも、「波長の合う落語家」さんとの出会いがありますように!