この世界には二種類の人間しかいない。瓶で人を殴打するリズムに合わせ手拍子をしたことがある人間と、その経験がない人間だ。

残念ながら、私は後者の人間である。

わかりやすく言えば、『KAT-TUN LIVE TOUR 2014 come Here』で披露された上田竜也ソロ『ART OF LIFE』を生で観たことがない人間だ。


まだKAT-TUNについて殆ど知らなかった今年の初め。
前年のカウントダウンコンサートに参加された和泉さんから「上田さんソロがJr.に根性焼きしたり、人を瓶で殴るのに合わせて手拍子する内容だった」という話を聞き「何それこわい」と震えた。

が、その後上田さんの魅力に開眼してからは「人を瓶で殴るソロめっちゃ観たい……」「私も人を瓶で殴打するリズムに合わせて手拍子したい……」とDVD化を切望する日々であった。


そして先月、ようやくDVDが発売され、その期待以上の内容に打ちのめされ、「AOL出の上田担になりたかった」という悔しさを抱えて生きている、このやるせない思いを昇華するために『ART OF LIFE』について心ゆくまで書き殴りたい。

※以下『ART OF LIFE』における上田さんについては「AOL様」と表記する。



ART OF LIFE』とはどんな内容なのか?

(以下、代々木第一体育館の公演をベースに描写)

幕が開くと、ステージを囲み屯する数名のいかつい男。その不穏な雰囲気とは対照的に、中央で白く輝く、美しい天使の像。

奥からもう一人の男がステージの上に現れ、スポットライトが彼を照らす。――AOL様の登場である。

指なしのレザーグローブ、チェーンや布で飾られた黒いパンツ、ごついブーツ、そして赤いファーがあしらわれた装飾過多な黒い上着の下は、裸。

見事に割れた腹筋、最早アイドルには到底見えない野獣のような肉体を、幾重にも絡む金のネックレスが彩る。


AOL様は、今いる場所が何処か確かめるような、生まれたての小鹿のように妙に無垢な眼であたりを見回す。


ステージ下手で、一人の男が葉巻に火をつける。

AOL様は悠々とした足取りで男に近づき、それを奪い取る。

葉巻をふかし、男をねめつけるAOL様。頭を掴まれた男はこの後の展開を予測し逃げようと試みるも、易々と抑えつけられ、左手に葉巻を押しつけられる。肉が焦げる音。

あまりにも残虐な行為だが、AOL様は心底楽しげに、歯を剥き出して笑いながら、男に葉巻を押しつけ続ける。


ふと、ガラスがぶつかるような音がして、AOL様は笑うのをやめ振り返る。


痛みに身悶える男を残し、弾むような足取りでステージを飛び降りる。近くの椅子に座っていた男が、AOL様の気配に身じろぐ。

男の不安は的中する。

正面に回り込んだAOL様は男の頭を掴み殴りつける。椅子から転げ落ち床に倒れ込む男。彼を組み敷いたAOL様は一瞬、殴りつけるかのように見えたが、「静かにしていろ」とでも言うように、唇に人差し指を当て、男から離れる。


怯える人間を見ることを、心底楽しんでいることがわかる表情でふたたび歩き出したAOL様は、木箱に入ったシャンパンの瓶を見つける。飲み口を掴み、ゆらゆらと瓶を掲げるAOL様の次の行動を察知し、逃げ惑う男達。

薄く笑みを浮かべるAOL様に追い詰められた男の一人が、ステージの上を後ずさる。馬乗りになったAOL様は、大きく瓶を振り上げ、男に叩きつける。

ガン! ガン! ガン! ガン!

男を瓶で殴打する音があたりに響く。顔をあげたAOL様はニヤリと笑い、挑発するように手招きする。

両腕をだらりと伸ばし、男は既に事切れているようだが、AOL様の行為がやむことはない。いかにも楽しげに、狂気に満ちた笑みを浮かべ、AOL様は更に男を殴りつける。周囲の男達が、そのリズムに合わせ手を叩き始める。

ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン!

いつしかその音は重厚なイントロに重なってゆく。立ち上がったAOL様を、照明が赤く染める。満足げに微笑みながら、イントロに合わせ手を叩くAOL様。

床に伸びていた先ほどの男を蹴り転がしたタイミングで、Aメロが始まる。


舌足らずで甘く少女性が高い普段の歌声を欠片も感じさせない、ドスのきいたハスキーな低音でラップ調の英語詞を歌い上げる上田さんの険しい表情。全てを支配する、王者の風格を感じさせる身ぶり。

Bメロの日本語詞からは少しメロディアスになり、いつもの上田さんに近い甘さの高めの歌声が響くのだが、もう、ここまでの展開が邪悪すぎて、この無垢な歌声が逆に怖い。「A.O... A. O. L.」の手を前に突き出す振りがちょっとカワイイんだけど、そのキュートさが逆に怖い。


そして2番では、黒ずくめの衣裳を纏ったゴツめのダンサーさんたちをAOL様が操っているような振りもあり、ますます増してゆく支配者っぷり。

間奏でジャンプしてステージを降りるAOL様、ストロボめいた照明、激しいダンス。
そしてスモークの中、殴りつけられた天使の像が無残に砕ける音。


更に男たちがAOL様を御神体のように担ぎ上げ、ステージへ運ぶ。上着を脱ぎ捨て、鋲だらけのベストをおろし鍛え上げられた肉体を見せつけるAOL様。

ラストのサビでは会場全体を挑発するように見渡し、激しく腰を振るダンスを披露し、最後にはベストを脱ぎ捨ててステージに腰かけ、そしてあたりは闇に包まれる。


……………書き起こしてあらためて、最高に正気の沙汰じゃねえなって思った。


DVD観賞時ログ

私が最初に観たのは代々木第一体育館の公演だった。

コレを予備知識なしで観た方の感想がめちゃくちゃ気になっている。事前に曲を聴いて雰囲気ある程度予測できるとしても、まさか根性焼きするとか瓶で人を殴打するとは思わないよな……?

日本アイドル史のこれまでもこれからも他に存在しないと思う。

悔しさに咽び泣いているところにブチこまれる、突然の上田口情報。

今評価すべきポイント明らかにそこじゃねえだろ感。

ここの演出、DVD収録されている全公演異なっていて、代々木は先述の通りで、国際フォーラムでは顔の前に手をやり、狂気に満ちた笑みで獲物を探すような目つきであたりを見回す。

カウントダウンコンサートでは(バックダンサーがJr.の男の子たちだったためか)最初から葉巻をふかして登場。険しい目つきで少年たちを見回す。

この後、更に30分近く観続けた。

正月一人餅出ではなくAOL出になりたいだけの人生だった。

完全にAOL様の虜である。

ツアーラストの代々木ではどこか「待ってました!」感があるのだが、国際フォーラムでは若干どよめきが生じていて面白い。

代々木は楽しげな笑みを浮かべることが多いのだが、国際フォーラムはあまり笑わず狂った目つきで相手を追い詰める場面が多いためか、デフォルメされたわかりやすい狂気の表現ではなく、純粋に狂気を追求しているように見える。

カウントダウンコンサートは、周りを囲む男達が年若いJr.ということもあり、AOL様の異常性と邪悪さが増して見える。ツアーで回を重ねたことにより、上田竜也とAOL様が完全に一致している感。

間奏部分が長めの尺で、AOL様とJr.は花道を歩きセンターステージへ。そこでJr.達が殴り合うような振りがあったり、天使の像を壊すのでなくJr.を瓶で殴りつけたりで、また違った凶悪さに満ちている。

完全に宗教。


まとめ

上田さんのソロは、独自性が高くこだわりぬかれた世界観、そして「今この瞬間」の上田竜也という素材を最大限に活かす内容だからこそ魅力的なのだと思っている。

逆立てた金髪、険しい表情、ボクシングで鍛え上げた肉体。
現在KAT-TUNのオラオラ要素を一手に担う、2014年~2015年の「今この瞬間」の上田さんだからこそ、『ART OF LIFE』は成立している。


たとえばAOL様から2年前、『KAT-TUN LIVE TOUR 2012 CHAIN』で披露されたソロ『RUNAWAY』。

美少女めいた甘栗期から、現在の金髪ヤンキー期への移行期。当時は黒髪で前髪をおろし、首輪めいた銀のアクセサリー、白い衣装から鎖骨をのぞかせ、しなやかに踊る上田さんはまるでいたいけな少年のようだ。

まだ中性的で無邪気なあどけなさが強い上田さん*1だからこそ、このソロのこの世界観が成立していて、同じ曲を今の上田さんが演ったら全く違う印象を与えるだろう。


それと同じく、あと2年、3年と年を重ね30代半ばに近づいた上田さんが演じるAOL様は、きっとこのDVDとは異なっている。おそらく今とまた違った魅力のステージになる。

私がこんなにも魅了されている、このAOL様を、生で拝む機会はもう無い。

その儚さ、刹那性、「今この瞬間」の自分の魅力を惹き出しまくる自己プロデュース能力の高さに、感服し心酔せざるをえない。

そして次なる上田さんのソロを、初めて生で目の当たりにする私が「これこそ俺が今いちばん観たかった上田竜也だ!」と言い出すのは明らかなのだった。

*1:この表現の何がイカれてるって当時すでにアラサー