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加藤シゲアキ「ピンクとグレー」

ジャニーズタレントが小説を書いたらしい、という話は以前から知っていた。

だが、別段ジャニーズに思い入れのなかった私が、それ以上の興味を持つことはなかった。


今ではそれをひどく後悔しているし、同じように「所詮アイドルの書いた小説だろ?」と目を向けないひとがいたら、それはとてもとても勿体ないことだと思う。

そんな色眼鏡や先入観は『ピンクとグレー』を読んで、粉々にしてもらったほうがいい。


こんなにも痛々しい、芸能界のおはなしを、現役のアイドルが描くのか。

語り手である「りばちゃん」と、幼馴染で親友の「ごっち」。高校生になった二人は読者モデルをきっかけに芸能活動をスタートするも、やがて「ごっち」だけがスターダムを駆け上がってゆくことになる。

微笑ましい幼少期や高校時代のエピソードの合間に、不安をかきたてる24~5歳の断片的なエピソードが語られ、違和感と、謎と、焦燥がうまれる。

(特に、「第三章 25歳 シングルモルトウィスキー」が招く様々な憶測といったら!)

それでも途中まで、これは青春時代の友情や、嫉妬や、すれ違いを描いた作品なのだろうと私は思い込んでいた。


そして終盤、これがそんな甘やかな物語ではなかったことを知った後、畳みかけるような展開で更に思い知らされ追い詰められていく最終章。確かにあらすじの通り、「2人の青年の愛と孤独」が描かれていた。

ひどくアンニュイで、青臭くて、痛々しい。

一歩間違えばめろめろの自己陶酔になりそうなのだが、読み手をアッと言わせ驚かせ楽しませようという試みが随所に仕掛けられているから、きっちりエンタメとして面白い。


どんな作家さんもデビュー作には、その後の作品にない熱量があると思う。

書き手が背負っている特殊性もあるからか、この作品から感じる熱は、ひどく風変わりで歪で、心地よい。


何より、計算し尽くされた構成や、言及される作品、細部へのこだわりまで悔しくなるほど自分好みだった。

ジャニーズに足を踏み入れて、好きな作家が増えるという意外な展開。他作品もモリモリ読みたい気持ちでいっぱいだが、少ない既刊をすべて読み終えてしまうのが勿体なくて、今は自分で自分を焦らしているところだ。